将棋雑誌にみる中学生棋士③

六段になったあと、再び加藤さんが特集記事になるのは、A級昇級を決めたときである。六段のときは、座談会や棋譜の解説が中心だった。八段までなると、かなり突っ込んだ記事になっている。まず、升田名人(当時)が加藤さんの棋譜の解説が載っている。裏を返せば、八段くらいでないと大山・升田クラスの棋士が総評したりしないということである。升田名人はこう評している。

しいていうなら、「今の調子でゆけば」という前提のもとに、つぎのようにいえるじゃないか。二十歳で名人になるか、二十五、六歳でなるか。とにかく二十歳台で名人になるだろう。本当の名人ができる。歴代の名人はみなある年令に達してからの名人だから、実力の外に他の要素が加わっている。つまり名人になったとき、すでに型ができ上ってしまっている。そこえゆくと加藤君の場合は、二十歳台の名人だから、実力だけの名人であり名人になってから他の要素が加わることになる。この点が歴代の名人とちがう。本当の名人ができるだろう、という私の期待もここにあるわけだ。(将棋世界 22(5), 1958)

「今の調子でゆけば」という前提は、いまになって大きな前提であることが理解できる。それだけ、順調に成長することが難しいということなのかもしれない。
同号には升田名人の原稿のほかにも、加藤さんの成績や戦型について取り上げられていることも特徴的だ。抜粋すると、
木村 1勝1敗
升田 2勝
大山 1勝1敗
塚田 1勝2敗
二上 1敗
木村14世名人との対局は非公式戦なのだろうか。今ひとつはっきりしない。ともかく、A級昇級前の成績にしては健闘しているようにも見える。
また戦型であるが、こちらも抜粋すると
矢倉 6勝1敗
縦歩 1勝1敗
対抗系(居飛車側) 12勝3敗
対抗系(振飛車側) 3勝1敗
角換わり棒銀 4勝2敗
角換わり腰掛銀 3勝2敗
となっている。振り飛車も指しているというのが意外。対抗系と書いたが、将棋世界誌には振り飛車(居飛車)あるいは振り飛車(振り飛車)としかないので、解釈が正しいのか不明。とにかく、オールラウンダーだったようだ。

この記事へのコメント