将棋雑誌にみる中学生棋士⑤

羽生さんが中学生になった1985年の時点で、加藤・谷川の元中学生棋士は名人経験者になっている。お好み対局など、企画満載である。今の藤井四段の特集にも通じるものがある。
印象的な企画は、羽生さんに対して心理学テストを行なうというもの。これまでには見られない傾向だ。 羽生さんの天才性を分析したかったのだろう。ロールシャッハ法と呼ばれるテストを受けている。ウィキペディアによると、「被験者にインクのしみを見せて何を想像するかを述べてもらい、その言語表現を分析することによって被験者の思考過程やその障害を推定するもの」だそうだ。
判定結果は、

反応の継起パターンは、部分反応から時によっては全体反応に移行するタイプであり、その部分反応も、普通の人には考えつかないようなものが多い。ふつうの人がめったに指摘しないような反応というのは、往々にして形体水準が低く、独善的なものに偏りがちなものであるが、この人の場合、特殊な反応内容であっても、形体水準は高く、十分に説得力のあるものばかりである。このようなことから、この人の思考パターンは独自性が高く、また、演繹的というよりはむしろ帰納的で具体的なものであることが推察される。また、結論を出すに際して、並はずれて慎重で粘り強い態度で臨む傾向が顕著である

ということだ。
演繹的とは、はじめにある考えが頭にあってそこから論理的に導いていく思考法のことか。帰納的とは逆に、目の前にある事柄を積み重ねてより一般的な考えを導き出す思考法だろう。 帰納的な思考法というのは、時として誤った考えを導き出すことがある。簡単な例で考えてみよう。サイコロを3回続けて6が出たとする。こんなことはめったに起きないから、サイコロに おもり などの細工がしてあるという考えを導き出す。これが帰納的な思考法の具体例だ。しかし、この考えは正しいとは限らない。実際に3回サイコロをふった程度ではわからないからだ。
ロールシャッハ法については批判もある。この結果を鵜呑みにできるかどうかはわからないが、羽生さんが指し手に対して慎重なのは、島朗『読みの技法』での対談でもよくわかることだ。

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