金子金五郎が唱える将棋教育と思想④

前回の記事で書いた見立てがもっともらしいのか確認するため、「金子教室」の別の記事を探ってみたい。今度は、升田対大山の名人戦挑戦者決定戦より。


大山は腰掛け銀では升田、木村にはほとんど勝っていないほど不得意だ。この原因を質的に探ってみたい。



刺激的な書き出しである。単なる棋譜解説にとどまっていないことは言うまでもなく、トップ棋士を分析してみせようというのだ。河口俊彦八段が中原名人に対しては控えめな書き方になっていると以前書いた。なかなか名人をトップ棋士でない現役の棋士が書くというのは恐れ多い。もっとも、「対局日誌」をさらに読み進める、河口八段にも変化が見られるようになる。それについては、いずれあらためて記事にしたい。
刺激的な書き出しのあと、次のように文章は続いていく。


腰掛け銀そのものが、銀と桂がハナを突き合わせ仕掛けたら寄せには入る可能性が濃い。その上に角の手持ちが激しい勝負になる。これが腰掛け銀という布陣の性格だ。升田がこれに強いのは彼が大業を得意とするので、腰掛け銀の性格と一致するにある。



心理面での分析である。前回紹介したものよりもわかりやすい。升田九段は当時角換わり腰掛銀を得意としていた。大山15世名人も指してはいたが、どちらかと言えば「大山矢倉」という言葉で形容されるように、矢倉が得意な棋士であった。
では、論理面は?気づいただろうか。すでに登場していたことを。


この原因を質的に探ってみたい。



これだけではさっぱりわからないかもしれない。なぜ大山15世名人が腰掛け銀で木村14世名人に勝てないのか、その背後にあるロジックを探求しようとしているのだ。つねに背後に見いだせる論理を明らかにしょうとする姿勢が、金子九段に通底しているのかもしれない。棋譜の形勢判断も、その論理を探るにするための歯車なのだろう。

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