全冠制覇はどのように報道されたか④

これまで記事を眺めていて気づいたことがある。全冠制覇したことについての記事はあったが、全冠制覇できるかどうかという記事はなかったことである。大山15世名人が五冠だった時代は長かったが、全冠制覇できるかどうかということについて異論を差し挟む余地がなかったのかもしれない。それくらい圧倒していたようにも映る。
中原16世名人の場合はどうか?中原自身が告白するように、四冠王から五冠王になるのに時間がかかったという事実がある。第一人者と呼ばれるような棋士でも全冠制覇への道のりは険しいという印象を、周囲に与えたのではなかろうか。全冠制覇できるかどうかということが、議論の対象になったというのは自然な流れかもしれない。
共同通信の田辺忠幸さんが「中原、六冠王なるか」という記事を書いている。そこには、中原16世名人に関わりの深い棋士へのインタビューが含まれている。
まずは、師匠の高柳九段。


「中原は全部のタイトルを取るべく本腰を入れている。きっと棋王位を奪うだろう」と”六冠王”誕生に大きな期待を寄せている。



兄弟子の芹沢九段はこう語っている。


「中原にしても、このようなチャンスは何度も訪れるわけではない」という。つまり、心・技・体の充実している今が絶好のチャンスと見ているのだ。



「このようなチャンスは何度も訪れるわけではない」大山15世名人は別格として、升田九段で1回、中原16世名人も1回、羽生二冠で2回だけである。芹沢九段の見立ては妥当であり、第一人者であったとしても当たり前のことではないのだ。
結局、棋王戦では加藤九段が中原16世名人に対して防衛し、1度きりの全冠制覇への道は潰えてしまった。

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