河口俊彦「対局日誌」で注目された棋士たち⑤

河口八段だけのことなのか、それとも棋士一般の反応だったのかはっきりしない。ともかく、「対局日誌」はデビュー時からずっと羽生善治を追っている。
『先を読む頭脳』という著書を以前紹介した。羽生二冠の学習方法をインタビューし、それを心理学や教育学、あるいは認知科学の立場から分析しようという、意欲的な研究を披露した本だ。その中で、羽生二冠自身が四段になって実力が伸びたと告白している。定跡を勉強することで、実力アップに繋がったそうだ。学習の効果は成績にも反映していて、ちょうどその時期に14連勝があったらしい。河口八段は「対局日誌」の中でこう書いている。



羽生が十四連勝で、谷川の記録と並んだ。
(中略)それに比べると羽生の連勝はすごい。勝つたびにぐんぐん強くなっている感じである。しかし、このくらいでは、まだまだ、という空気がどこかにあり、今日勝てば、本物ということになる、新記録が成るからではない、相手が中村だからである。



ちなみに、中村九段との対局は、羽生さんの勝ち。藤井四段は29連勝で注目されたが、その半分の数字で周りをアッと言わせた。15連勝をかけた対局は、今は亡き小野敦生四段(当時)とのもの。残念ながら15連勝はならなかったが、小野四段を苦しめたと記してある。そのときの記述から抜粋。


加藤、大内、関根と、棋界の御意見番みたいな人がそろったので、羽生の将棋を二局並べて見せた。感想は私と同じ。
どこからともなく、谷川名人の時代も長くないな、の声が聞えててきたようである。



河口八段は記録することの重要性を語っていた。そのことはこのブログでも何度か紹介している。羽生二冠をデビュー時から注目し記述する意義というのが伝わってくる。15歳の少年が大成するかどうかは当時はわからないが、今になって振り返ってトップ棋士の検討であったり反応というものがリアリティをもって伝わってくる。●●名人物語のような伝記モノにはないリアリティだ。また、羽生善治という存在を通して、藤井聡太に注目する意義というのがはっきりしてくる。
「対局日誌」の果たした役割は大きいと思う。

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